栄養豊富で、お財布にも優しく、毎日の食卓で強い味方になってくれる“きのこ”。今回は、乾燥&冷凍させて一工夫。栄養がより高まる上、長期間の保存が叶ったり、いつもと違う食感になる嬉しい効果も。きのこの新しい可能性が見つかるはず!
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風味アップも保存も叶う。乾燥&冷凍きのこの魅力
秋の旬食材の代表格・きのこは栄養面でも優秀食材。
「成分の約90%が水分のため低カロリーで知られるきのこですが、実は代謝を助けるビタミンB群や、カルシウムの吸収を助け、将来の骨粗鬆症予防にも役立つビタミンDも豊富。そして食物繊維が腸内環境を整え、免疫力の向上も助けてくれるんです」(料理研究家、フードコーディネーター・木田マリさん)
その豊かな栄養と風味を生かしつつ保存もきかせたい。そこでおすすめなのが、乾燥と冷凍。
「水分が蒸発し、栄養素も旨味も凝縮されるのが乾燥のメリット。半日干すだけでも十分です。また冷凍すると、きのこの細胞膜が壊れて旨味成分や栄養が外に出やすくなり、料理の風味や体への栄養吸収率も上がるのが魅力」
今回は、乾燥きのこをおいしく食べるための、簡単レシピを紹介。満足感もたっぷり!
旬のごちそう。きのこ大集合!

椎茸
血流をスムーズに調整。自家製干し椎茸がおすすめ。
ビタミンB群など多彩な栄養のなかでも血流、血圧を正常に保つエリタデニンを多く含むのが特徴。「干し椎茸は高級だしとして人気の食材。もちろん家で軽く干すだけでも栄養効果が高まります」(木田さん)
舞茸
免疫調整と骨強化に効果あり。油との調理で吸収効率アップ。
「免疫機能を整えるβ-グルカンと骨を丈夫にするビタミンDを多く含みます。ビタミンDは油と一緒に摂ると吸収効率がアップ」。乾燥、冷凍どちらにも向き、食べ応えもある主役級きのこ。
ぶなしめじ
乾燥でも冷凍でも相性抜群。疲労回復&美肌のマスト食材。
肝機能を助け、疲労回復を促すオルニチンと皮膚や髪、爪を強化するビタミンB2が豊富なぶなしめじ。石づきをカットして小房に分けて、乾燥または冷凍を。水分に弱く、早めの消費がおすすめ。
マッシュルーム
脂質代謝と元気チャージに◎。和・洋・中と調理法も多彩。
脂質の代謝と疲労回復を助けるビタミンB2を多く含む。「乾燥、冷凍どちらにも適し、和・洋・中いずれの調理法でも楽しめます」。みじん切りもよし、丸のままつるんとした食感を味わうもよし。
エリンギ
肌の保湿も叶う!? 美白きのこ。切り方で食感の違いも楽しめる。
カリウム、そして天然の保湿成分・トレハロースを多く含むエリンギ。冷凍はもちろん、干せばサクサクとした独特の歯応えを楽しめる。「縦切り、横切りそれぞれの食感の違いも味わって」
えのきたけ
リラックスや睡眠の質を高める栄養素・GABAに注目!
「特筆すべきはリラックスや不眠対策に有効なGABAが豊富なこと。外側のぬめりはタンパク質の吸収を助けるムチンです」。冷凍してスープの具にすれば、その特有の栄養素を汁で余さずいただける。
乾燥きのこ
おすすめは“半干し”。「半日バルコニーで軽く干すくらいの状態だと、水でしっかり戻す手間は不要。調理の過程で、調味料や合わせる食材の汁気を吸って戻るので、水で戻す手間も省けて時短にもなります」(料理家、栄養士・田村つぼみさん)。冷蔵庫で保存を。

作り方
ネットやざるなどを使い、日の当たるところに干す。エリンギはしめじくらいの細さに裂く。椎茸は軸とかさの部分を分け、かさは2等分にする。マッシュルームは大きいものはスライス、小さめなら2等分にカットすると使いやすく食べやすい。
干し時間の目安 ※晴れて日が当たる時の場合
【エリンギ、椎茸、ぶなしめじ、舞茸】
石づきをがあるものは除いて食べやすいサイズにして、半日ほど
【えのきたけ】
石づきを除いて細かくほぐして2時間ほど
【マッシュルーム】
食べやすい小さめのサイズに切り、半日~1日。しっかりめに乾かしたい場合は、薄切りがおすすめ。
エリンギとピーマンの青椒肉絲風

エリンギのパリパリ食感が新鮮! 栄養バランス最高の中華炒め。
使用したきのこ:エリンギ
肌の水分キープに役立つトレハロースを多く含むエリンギを、ビタミンCとβ-カロテン豊富なピーマンや高タンパクな鶏むね肉とともに摂取できる美活メニュー。鶏むね肉は繊維に沿って切るのが柔らかく仕上げるコツ。
材料/2人分
干しエリンギ…25g(約1パック〈100g〉分)、ピーマン…2個、赤ピーマン…2個、鶏むね肉…100g、A[塩、こしょう…各少々、おろしニンニク…小さじ1/2、酒…小さじ1]、片栗粉…大さじ1/2、ごま油…大さじ1、水…1/2カップ、オイスターソース…大さじ1弱
作り方
1、鶏むね肉は繊維に沿って8mm幅程度の細切りにして、Aと混ぜたあと、片栗粉をまぶす。各ピーマンは5~7mm幅の細切りにする。
2、フライパンにごま油を熱し、1の鶏むね肉を炒める。全体の色がしっかりと変わったら水と干しエリンギをそのまま入れて、弱めの中火で水分が少なく(大さじ2杯ほど)なるまで炒め煮する。
3、ピーマン、赤ピーマンとオイスターソースを加えて、水分がなくなるまで一緒に炒め合わせて完成。
ぶなしめじと椎茸のトロッと煮

きのこの滋味と豆腐の栄養たっぷり。心も体も温まるヘルシー煮込み。
使用したきのこ:ぶなしめじ 椎茸
乾燥ぶなしめじのサクサクとした食感と、干し椎茸の深い風味がおいしさの決め手。高タンパクで女性ホルモンに似た働きをするイソフラボンが豊富な豆腐もたっぷり。豆腐を崩さないようになるべく混ぜず、触らず、がきれいに仕上げる秘訣。
材料/2人分
干しぶなしめじ…50g(約100g分)、干し椎茸…30g(約90g分)、木綿豆腐手…200g、だし…1カップ(だしの素小さじ1/2を水で溶いてもOK)、醤油…大さじ1/2、みりん…大さじ2弱、塩…少々、片栗粉…小さじ2、水…大さじ1,1/2
作り方
1、木綿豆腐は2cm厚の大きめに切る。
2、フライパンにだし、醤油、みりんを入れて一煮立ちさせ、干しぶなしめじ、干し椎茸、木綿豆腐を入れて煮立ったら、さらに5分ほど煮込む。
3、塩で味を調え、水溶き片栗粉を少しずつ加えてとろみをつける。お好みで、小ネギ(分量外)を散らす。
マッシュルームとえびのチーズ春巻き

マッシュルーム&えびの濃い風味をチーズが包む、まろやか春巻き
使用したきのこ:マッシュルーム
乾燥マッシュルームの凝縮した味わいに驚く、洋風のチーズ春巻き。抗酸化物質・アスタキサンチンが豊富なえびを合わせれば美容効果もアップ。醤油はもちろん、塩やマスタードを添えればちょっとしたおもてなし料理に。
材料/6本分
むきえび…150g、A[塩、こしょう…各少々、白ワイン…小さじ1]、干しマッシュルーム…80g(約1パック〈100g〉分)、春巻きの皮…6枚、シュレッドチーズ…50g、粒マスタード、塩、醤油…各適宜
作り方
1、えびは粗く刻み、Aと混ぜる。干しマッシュルームも粗く刻む。
2、春巻きの皮の中央に6等分した1とチーズを置いて、ふちにノリ(小麦粉と水を同量で溶いたもの、分量外)をつけて、具が漏れないようにしっかりと包む。
3、油(分量外)で揚げるか、フライパンに油を少しひき、揚げ焼きにする。全体がきつね色になったら完成。お好みで塩や粒マスタード、醤油をつけていただく。
お話を伺った方々
Profile
木田マリ
料理研究家、フードコーディネーター。女子栄養大学非常勤講師。きのこ料理に詳しく、きのこ学会代議員、きのこマイスターとしても活躍している。著書に『からだにおいしいきのこ料理115』(理工図書)などがある。
田村つぼみ
料理家、栄養士。著書『体が勝手に元気になる だる消しスープ』(アスコム)などをはじめ、女性誌を中心に体に優しい料理を提案。駒込のキッチンスタジオの隣で、カフェ『fudangohan』を運営。
anan 2469号(2025年10月29日発売)より





























