空前のKAWAIIブーム。ジャパンポップカルチャーを牽引するASOBISYSTEMから誕生したアイドルプロジェクト「KAWAII LAB.」。彼女たちが今、KAWAII旋風を巻き起こし中! バイラルヒットを飛ばし続ける秘訣をクリエイターの目線を通して考えます。
Index
KAWAII LAB.
原宿から世界へ、SNS時代のKAWAIIを拡散中。2022年に発足したASOBISYSTEMが日本のアイドル文化を世界へ発信するアイドルプロジェクト。“原宿から世界へ”を合言葉に、FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE、SWEET STEADY、CUTIE STREETの4組が活動中。今後はグループを横断した活動も期待される。
【カワイイを哲学し、生み出す作詞作曲家&音楽プロデューサー・ヤマモトショウさん】FRUITS ZIPPERの歌詞から読み解く

「アイドルはカウンターカルチャーの繰り返しです」
と語るのは、KAWAII LAB.の楽曲制作を多数手がけるヤマモトショウさん。
「会いに行けるアイドルの後にはSNSで見て拡散して応援するアイドルの時代が来た。カルチャーは常にそんな作用反作用で生まれるもの。その変遷の中で生まれた『アイドルってこうだよね』って固定観念に対して『もっとこうでもいいよね?』と問いかけてみるのが僕の形です。可愛さがテーマというと直感的なイメージかもしれないですが、実際は思考の積み重ね。そのベースには大学で学んだ哲学的思考があるのかもしれませんが、日常で目にしたものをヒントに仕事部屋で一生懸命考えて書いています(笑)」
例えばFRUITS ZIPPERの人気曲「フルーツバスケット」。メンバーをフルーツに見立てたポップな歌詞…と思いきや、そこにも深い考察が!?
「〈パフェみたいに可愛く…〉という部分が面白いとSNSでも褒められましたが、パフェってカワイイフルーツの集積体。そういう誰もが見たことあるものの中に新しい視点を提示することが、クリエイティブの価値。そして〈保存して未来で愛されるだろう〉のくだり。これはジャムになって長く楽しまれる的な意味ですが、実際ふるっぱーほどバズったら10年先も歌われているはず。長く愛されるちゃんとしたヒット曲になるには普遍的なメッセージも必要という思いを込めたつもりです」
時代のアイコンに捧げる歌詞だからこそ、時を経ても色あせない言葉を。そこにはヤマモトさんならではの客観的で深いアイドル愛が表れている。そしてこの先、歌詞にしたい“カワイイ”の種とは?
「いやもう逆にありすぎます。僕はKAWAII LAB.の制作を通して何にでもチャームポイントを見つけられるようになったので。何より、アイドルに熱狂したことがなくロジカルな僕という人間から“世界一カワイイ”歌詞が出てくるということ自体が、あらゆるものにカワイイは存在することを証明していると考えています(笑)」
もっと深堀り! 歌詞のKAWAIIところ
ヤマモトさんが、特にバズった楽曲を歌詞の面から考察。キャッチーに見えてそこには鋭い意図と深い意味が隠されて…?
どんなときもパフェみたいに可愛く集まっていたいけど
FRUITS ZIPPER「フルーツバスケット」
「1粒でもカワイイ果物がグラスに集まってる。それってめちゃカワイイって。見慣れたものにカワイイは隠れてる。そう提示することで『それなら自分にもカワイイとこあるよね』と聴く人の自己肯定感を刺激できたら」
あれ気付いちゃいましたか?
FRUITS ZIPPER「わたしの一番かわいいところ」
「〈うまれて30秒〉から始まるこの曲のテーマは“気づき”。私のカワイイところに気づいてるあなたがすごいし、さらにそれに気づいてる私もすごい! その好循環でいい関係性が育っていく。デビュー曲の冒頭らしい一節です」
愛、未来、おかし、メイク、友達、笑顔、睡眠、ほらぜんぶ大切だね
FRUITS ZIPPER「NEW KAWAII」
「7人のメンバーで一つずつたたみかけるように言って、サビに入るフレーズ。でも言いたいのは、この7つ以外にも大切なことはいっぱいあるよということ。ここでわーっと挙げることで、反対にそれを表現できたはず」
一年365日 わたしのこと一番見てるひと
FRUITS ZIPPER「かがみ」
「アイドルが一番向き合ってるものは? と考えて思い浮かんだのが鏡。でも鏡を通して見るのは自分。だからテーマは自分とどう向き合うか。確固たる答えより、こういう見方もあるよねと提案し、解釈の幅を残してます」
Profile

ヤマモトショウ
1988年生まれ、静岡県出身。 東京大学文学部哲学専修課程卒業。「わたしの一番かわいいところ」他、多数のヒット曲の制作に参加。近著に『歌う言葉 考える音 世界で一番かわいい哲学的音楽論』(祥伝社)。
anan 2463号(2025年9月17日発売)より