ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。コメディアンの藤井隆さんを迎えての対談をお届けします。

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    Profile

    藤井隆

    ふじい・たかし 1972年生まれ、大阪府出身。1992年、吉本新喜劇に入団。2000年『ナンダカンダ』で歌手デビュー。現在は舞台やドラマ、音楽などさまざまな分野でマルチに活動する。初エッセイ集『マ・エノメーリ』(KADOKAWA)が発売中。

    ゆっきゅん

    1995年生まれ、岡山県出身。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」を開始。EP『OVER THE AURORA』が配信中。自身のYouTubeチャンネルで公開中の「DIVAと私語しよ?」も話題。

    DIVAって心が高揚する、共に踊れる存在

    ゆっきゅん

    藤井さんのエッセイ本『マ・エノメーリ』を拝読しました。大切にされている考えが書かれていて、とても心に残っています。

    藤井隆

    そんなふうに言っていただけると嬉しいです。

    ゆっきゅん

    この連載でも藤井さんの思考を深掘りしたいと思っています。まずは音楽の話から。最初に購入されたレコードは戸川純さんの作品だそうですね。藤井さんの音楽ルーツはそこが始まりですか?

    藤井隆

    戸川さんは僕の中では、「俳優」なんです。演技をするように歌う姿に驚いた存在でした。では「DIVAは誰だったか」と聞かれたら、やっぱりカイリー・ミノーグじゃないかな。そしてポーラ・アブドゥル、ジョディ・ワトリー。この3人は外せません。

    ゆっきゅん

    最初にカイリーを知ったきっかけはなんだったんですか?

    藤井隆

    最初はビデオです。イギリスの音楽プロデューサーチームのストック・エイトキン・ウォーターマンがカイリーの作品も手掛けていて、映像をよく観ていました。高校生の時にシニータ、カイリー、デッド・オア・アライヴの3組によるコンサートが大阪城ホールであって、それを観に行ったのが原体験でしたね。その後、単独コンサートも観に行っていて、来日公演は皆勤賞なんです。

    ゆっきゅん

    私も昨年、ライブを観に行きました! 本当にすばらしくて。

    藤井隆

    東日本大震災の時も、海外アーティストの公演が軒並み中止になる中で、彼女は日本に来てくれた。あのご恩は忘れません。みんな、歓喜で半泣きでしたよ。

    ゆっきゅん

    私は幼少期にJ-POPのDIVAばかり聴いていたんですけど、のちにカイリーを知った時、もう私の耳が「好きになる準備」を終えていた状態だったんです。「みんなが目指していたのはこれか!」と腑に落ちました。もう、踊り出さずにはいられない感覚というか。

    藤井隆

    惹かれるDIVAの共通点は「踊れる人」であることかな。心が高揚して「頑張ろう」と思わせてくれる存在。それこそ安室(奈美恵)ちゃん、MAX、Perfume、もちろんマドンナも大好きだし。

    ゆっきゅん

    踊れる音楽、踊れる人が絶対条件なんですね。藤井さんの選ぶ音楽の趣味、本当に信頼できて、参考にしています!

    藤井隆

    でも、ちゃんと自分の目と耳で選んでね(笑)。

    ゆっきゅん

    実はこの連載、たびたび藤井さんの話になるんです! スカートの澤部渡さんにとってのDIVAも藤井さんでした。

    藤井隆

    先に言ってよ! 本当に深く愛していただいて嬉しいですね。

    ゆっきゅんと澤部渡さんの対談記事はこちら!

    ゆっきゅん×澤部渡「本当の反抗は、ポップスで居場所を作ること」

    寿司やカップラーメンを食べたくなったら…?

    ゆっきゅん

    藤井さんが「舞台の上で歌うこと」を決心された頃の話を伺いたいです。

    藤井隆

    歌を出すと決まった時、最初は戸惑いました。ニーズもわからないし、「自分がこう表現したい」という欲求も特になくて。でも、担当の人を信頼していて、その人が「やろう」と言うことはやってみてもいいなと思えたんですよね。

    ゆっきゅん

    幅広い活動をされていますが、それらも同じスタンスですか?

    藤井隆

    最初から「やってみたい」と言い出したことではなかったです。でも、やらせていただくと好きになっちゃうんですよね。

    ゆっきゅん

    歌うことは最初から楽しかったですか?

    藤井隆

    そう思えるようになるまでは案外、時間がかかりました。でも今は楽しいですね。なるべく自分が好きなものを好きなまま表現するよう心がけています。ただ、いまだに照れくささが強く「聴いてください」と訴えかけるのが苦手なんです。「歌でも応援してくださいね」とは思っていますけど。

    ゆっきゅん

    ステージに立つ上で、大切にされていることは何ですか?

    藤井隆

    昔、コンサートのリハーサルでもじもじしていたら、レコード会社の社長に言われたんです。「君はタレントだから、君の歌を知らない子どももたくさん来る。その子たちにとってはきっと初めてのコンサートで、一生記憶に残るものだから、恥ずかしがらずに集中しなさい」と。本当にその通りですよね。

    ゆっきゅん

    重みのある言葉ですね。

    藤井隆

    今でも上手く歌う以上に「あの人楽しそう」「楽しかった」と思ってもらいたいんです。だからこそ、本番まで自分の機嫌を損ねないことを第一に考えていますね。

    ゆっきゅん

    楽しくいられるようにする、というのは簡単そうでいて、実は難しいことですよね。

    藤井隆

    物理的に危ないステージや、急なフォーメーション変更とかもあって、誰かに怪我をさせたら取り返しがつかない。気が緩むのとリラックスは違うし、緊張感を保ちながら楽しくやるのは年を重ねるごとに難しくなるけど、いまだに心がけています。

    ゆっきゅん

    本番前の準備やルーティンはありますか?

    藤井隆

    あえて作らないようにしています。決めすぎるとガチガチになるので。ただ、お寿司やカップラーメンを食べたくなったら、それは声がかれるサインなんです。

    ゆっきゅん

    バロメーターが独特ですね!

    藤井隆

    油分や温かさ、ガリの生姜が喉にいいんでしょうね。体の声には耳を澄ませるようにしてます。

    グッズとして提案した『二口ガスコンロ』

    ゆっきゅん

    藤井さんの音楽レーベルでのプロデュースワークも大好きです。誰に何を歌ってもらうか、楽曲のビジョンは最初から見えているんですか?

    藤井隆

    もちろん前提に「好き」がある上で、見えています。後藤(輝基)くんの場合でいうと、忙しい後藤くんが歌ってくれている姿が映像で見えて、「絶対やってくれる」と最初から確信できていました。

    ゆっきゅん

    画(え)として見えているのすごいです! レコーディングのディレクションはどうされていますか?

    藤井隆

    僕は専門的な音楽用語が使えないので、抽象的に「景色」で伝えます。例えば「車が走っている時と止まっている時の、窓の外の景色の流れ方の違い」とか。

    ゆっきゅん

    イメージが湧いてきます。

    藤井隆

    あと僕自身が昔、録音ブースが怖かった経験があって。だから、歌う側の主導権を尊重し「気分を害さない、テンションを上げさせる」ことは意識しています。

    ゆっきゅん

    ブースは緊張するようにできてますもんね。外の会話は聞こえてこないから心細いし。

    藤井隆

    レコーディングは一度きりの作業なのに、作品としていつまでも残るもの。ベストを尽くせる環境にはしたいんですよね。

    ゆっきゅん

    グッズも、ロイヤルホストとコラボした「オニグラキャセロール」など、熱量がすごすぎて感動しました。どうやってあんな企画を考えるんですか?

    藤井隆

    あれは若い頃、ロケで失敗した帰りに食べて、あまりのおいしさに感動した思い出があって。手紙を書いて粘り強く交渉しました。

    ゆっきゅん

    まだ実現していないアイデアもたくさんありそうですね。

    藤井隆

    初コンサートで「二口ガスコンロ」を本気で提案して却下されたこともありました(笑)。職業柄、ボケならいいのに、本気で変なことを言ってしまうのが僕の弱点だと自覚しているんです。

    ゆっきゅん

    藤井さんのこだわりはファンにもしっかり届いていますよ。

    藤井隆

    もちろん在庫を抱えると申し訳なくなるので、売れるものを作る意識も大事なんですけどね。

    ゆっきゅん

    私も自分で予算管理をしてグッズを作っているので、その大変さは分かります。派手好きなデザイナーと一緒に考えると色柄が度を越して、自分だけが欲しいものになってしまったり…。

    藤井隆

    大切に使ってもらえるものを想像しながら企画を立てないといけないよね。この前は有田焼のイヤープレートを制作したんだけど、飾る要素と普段使いの要素を両立させようとすると大変で。でも、やりがいがあって楽しい!

    『任せてもらえた瞬間』に一番パワーが出る

    ゆっきゅん

    藤井さんは、若い頃から今の活動をイメージされていましたか?

    藤井隆

    全く違います。たぶん最初に担当してくれた人が思い描いていたタレント像にはなってないと思う。それに応援してくれる人が好きでいてくれるのは、もしかしたら「あの頃の僕」なのかもしれない。けど、そのままでずっとは居続けられないし、たとえ違うことに挑戦して失敗しても「こっちのほうがよかったね」と言ってくれる人がいるから、これからもいろいろなことをしてみたいですね。あとは、「あいつにやらせてみようかな」と思ってもらえる自分でいたい。

    ゆっきゅん

    その考えが、今の活躍に繋がっているんですね。

    藤井隆

    「僕に任せてくれるんですね」という瞬間に、一番パワーが出ます。期待されるとパフォーマンスが上がる特性なので(笑)。

    ゆっきゅん

    今、励みになっている存在はいらっしゃいますか?

    藤井隆

    舞台で秋山菜津子さん、大倉孝二さんとご一緒する機会が多く、お二人の頑張る姿を見ると励みになりますね。秋山さんは実はかつて『夜のヒットスタジオDELUXE』でバックダンサーチームDee-Deeとして活動され、その後spinning Dee-Deeとして歌手活動もされていた方。そういう意味でも本物のDIVAですね。舞台は本当に肉体労働で、年を重ねるとケアも必要です。「あと何本できるだろう」と考える時に、還暦を越えてなお走り続けている秋山さんの姿に勇気をもらっています。

    ゆっきゅん

    素敵です。これからの藤井さんが目指す場所はどこですか?

    藤井隆

    迷ったら「こっちのほうが面白そう」と思える道を選ぶかな。自分の仕事は世の中に絶対不可欠なものではないかもしれない。だからこそ「藤井を選んでよかった」と言っていただけるようになりたいですね。

    ゆっきゅん

    藤井さんが面白いことを続けてくれることが、私たちの救いになっています!

    藤井隆

    ありがとう! 今は自分が楽しいものが好きだと理解しているし、それを口に出せるようになった。その思いを仕事に還元していくしかないと感じています。

    ゆっきゅん

    音楽でも、さらに突き詰めていかれる感じですね。

    藤井隆

    そうだね。自分の好きなものを少しずつチューニングしながら。

    ゆっきゅん

    藤井さんが新しい技術や人と出会って、熱量を出している姿に私も刺激をもらっています。

    藤井隆

    嬉しい! もっとたくさんの人に観ていただける機会を作れるように頑張ります!

    ✍️ ゆっきゅんのまとめ

    人との縁を大切に。藤井さんが歩んできた道のり

    5年前、「DIVA Projectを始めます」と宣言してリリースした「

    」という楽曲のMusic Video。「藤井隆さんに見てほしい」と言っていたら、吉田豪さんが藤井さんに連絡してくれたらしく、藤井さんはすぐに見てくれて、

    「ゆっきゅん はじめまして! 2回観て聴きました! DIVA ME!!!」とリプライをくれました。嬉しすぎて、DIVAを始めてよかった…これから始まるのだな…私なんだ次の番は! と感動したのでした。それから、ライブであいさつさせてもらったり、ただ舞台を観に行ったり、コメントをいただいたり、アルバムレビューを書かせてもらったりという交流はあったのですが、こうして2時間もゆっくりおしゃべりをするのは初めてのことでした。

    様々なお仕事でそれぞれに違った魅力を放つ藤井さん。私にとって藤井さんは、あんな大人になりたいなと憧れる、ロールモデル的な存在です。面白くて、かっこよくて、優しくて、自分がやりたいことや良いと思う基準がご自身の中ではっきりしていて、手を抜くことなく楽しんでいる姿を見せてくださって。きっと自分がこの仕事を続けた先にこんな未来があったらいいなーと無邪気に思ってしまうような光をいつもいただいています。

    秋山菜津子さんというDIVA的存在について教えてくださいました。Dee-Deeのことは藤井さんがいないと知らないままだったかもしれません。その秋山さんの話をする時や、過去にお仕事でご一緒した方について話す時、歌をやってみなよと言ってくれた人について語る時など、そのエピソードが藤井さんの中に今どう残っているのかってことに加えて、その人の存在が藤井さんにとってとても大切な人であることが、朗らかに重みを持って伝わってくるような印象がありました。これは著書の『マ・エノメーリ』を読んでいる時にもあった感触で、藤井さんが人との縁を大切に生きてきた道のりがあたたかく見えてくるような気がしました。幸せな時間でした。

    完全に余談ですが、藤井さんがやっていた頃の『オールナイトニッポン』を本当に聴きたかったなあと思った対談でもありました。私がただ好きな曲を発信していたら「それ昔、藤井さんがラジオで流してたよ」と言われた経験が何度もあって、きっと、もう知ることができないけれど好きに決まっている音楽が毎週流されていたと思うとあの頃に戻って聴きたくてたまりません!

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    写真・鳥羽田幹太 文・綿貫大介

    anan 2489号(2026年3月25日発売)〜2493号(2026年4月22日発売)より

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