
9月5日から東京ミッドタウン日比谷で開催される展覧会「HUMAN AND NATURE」について、現代美術作家の平子雄一さんにインタビュー。
“人間社会と自然の関係性”というコンセプトを一番豊かに表現できるように
人間と思しき体に植物の頭がついた不思議な存在を描いた作品が人の心を揺さぶる、現代美術作家の平子雄一さん。幼少期から身近にあった自然の捉え方が人や地域によって違うと気づいたことから興味を持った“人と自然の共存”が、作品制作における大きなテーマとなっている。
「僕は岡山出身で、家を出るとすぐに田畑や野放しになった雑木林がある、自然に囲まれて生まれ育ちました。高校を中退してロンドンで暮らし始めましたが、公園に行った時に誰かが『自然っていいよね』と言うのを聞いて。“そこにあるだけ”のものではなく、人が管理して維持するものを自然と呼ぶことに違和感を覚えて、作品に落とし込むに値するテーマになると感じたんです。そこで、イギリスの庭園の成り立ちや、人と自然の関わり方の変遷などを調べるように。そして、“自然を消費する段階から守る段階に入った”“とはいえ貧富の差により守れる人とそうでない人がいる状況が発生している”“それなのにエコやSDGsという題目を当然のことのように掲げるのはなぜか”“一人一人のマインドを変えていくほうが大事なのでは…”みたいに考えるようになりました。なかなか解決しない問題だと思いますが、考えることをやめると本当の意味で豊かな時代がこない気がするので、僕の作品を見ることが自然について考えることに繋がったり、何かが変わるきっかけになるといいなと思っています」
丸みを帯びたフォルムやカラーリングを可愛いと感じる人も多いはず。
「僕はシビアなテーマをシビアに突きつけることができなくて。それを包むオブラートがどんどん重なった結果なのかもしれません」
作品はドローイングや立体造形など幅広い。
「“人間社会と自然の関係性”というコンセプトを一番豊かに表現できるように、出力方法を変える感覚で制作しています。以前は絵画が中心で、次第に立体となり、さらに吊るすような手法も取り入れたりと動きをつけた立体を用いて空間そのものを作るなど、チャンネルは増えていますね。新しいチャンネルが生まれるのは、作品と自分の距離感が変わった時。若い頃は距離が近く、自分の物語として作品を出力することが多かったのですが、今は少し離れた距離にいます。僕だけの視点で全てを把握できる範囲のテーマではないということに気づき、国や個人などそれぞれに違う視点を持つ人々のお話を取りまとめる、というスタンスに。特に最近は、未来に託すものを作るという、さらに引きの視点に変化しています。たまに、『自然の中に住んでみたら?』と言われますが、ほとんどの人が都市に住んでいるので、彼らと同じ視点を持つことが重要というか。自然という全然違う環境で過ごす人が制作した作品は現実的じゃないと思うんです」
大事にしているのは、「一つ前より質の高い作品を作ること」。
「僕の場合、自身の作品の質の良し悪しは感覚の話でしかなくて。たとえば、“この曲線でこの色の組み合わせのほうがいい”と自分が思う根拠もいまいちわからないんです。時に新鮮だったり、安心できる表現だったり。ただ、全ての分野と同様に作家が作り出す作品にも優劣が存在します。普遍的な作品は、実はあまりなくて。時々、レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』や、草間彌生さんの『南瓜』シリーズのように普遍的な存在が出てくるけれど、一時期輝きを放った作品のほとんどは消えていく。基本的には作品は社会がその価値を決めているので、どうしても抗えない部分ではあります。制作を続けていく中で、僕自身、思いも寄らないレベルのものが出来上がることを期待しているところはあります。自身のことながら、それが最大の楽しみなのかもしれません」
ビジネス街と緑豊かな公園が隣り合う、日比谷ならではの展示に
9月5日から東京ミッドタウン日比谷で開催される展覧会「HUMAN AND NATURE」では、空間全体を使ったインスタレーションを展開。初公開となるモビール群や新作の絵画、立体作品など約300点を展示。人と植物、都市と自然の関係性について思考を深めるきっかけを生み出す内容となっている。
「日比谷は、昼間は仕事をする人たちが集まって活発に、夜は静かになる街。働く時間と仕事が終わってリフレッシュする時間がうまくサイクルとして回っている印象があります。日比谷で展示をした意義は開催後にわかることですが、隣に都内有数の緑豊かな日比谷公園があることは、大きい要素になると現時点でも感じています。ビジネスをする場所と自宅の庭のような癒しの場所が隣り合っている点は、他の公園と大きく違いますよね。展示は二部構成になっていて、第一の部屋には平面やドローイング作品、いろいろなサイズの立体造形を置きます。第二の部屋は片側がガラス面になっており、対面にビルが見えるなど人工的でありながらも光が差し込む空間に。そこに最大3.5mの立体造形作品が4列にわたって吊るされて、見る人は隙間を縫うようにして進んでいくことになります」
立体作品に関しては、「スケールの違いをしっかりと作る」ことが大きなこだわりになっているという。
「手のひらにのるくらいのサイズの作品には植物を愛でるのに近しい気持ちを、人間より少し大きいくらいのものには対等な関係性を感じてほしいです。そして、思わず崇めたくなる巨木のようなサイズの作品には、向き合い方がわからずとも関係を継続しなければならない自然に対する畏れやどうしようもなさを感じてもらえたら」さらに、東京ミッドタウン日比谷の日比谷ステップ広場には、「人のような身体に植物の頭部を持つモチーフ」の大型立体作品を展示。「約4.5mの作品を立たせる予定で、もともとあるゴジラと戦うような配置になるかもしれません(笑)。もれなく視界に入ると思いますが、作品を見に来た人だけでなく、ふらりと日比谷に来た人が意図せず見て思考を巡らせることが、大事だと考えています」
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「HUMAN AND NATURE」
東京ミッドタウン日比谷 ホール6階 東京都千代田区有楽町1-1-2 9月5日(土)~10月18日(日) 11時~20時(最終入館19時30分) 会期中無休 オンライン券:一般2000円、大学生・専門学生1500円、中高生1000円、小学生以下無料 当日券:一般2200円、大学生・専門学生1600円、中高生1100円、小学生以下無料
https://www.hibiya.tokyo-midtown.com/humanandnature.yuichihirako/
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『I’m donut?』とのコラボなど関連イベントにも注目!
展覧会の開催を記念して、大人気生ドーナツ専門店『I'm donut?』とのスペシャルコラボレーションが行われることに。平子さんがこのために描き下ろした、オリジナルデザインの限定コラボアソートボックスに入ったドーナツ(4個入り)を、各日数量限定で販売する。また、日比谷公園(つつじ山:日比谷松本楼周辺)では、9/4~10/18の期間に、作品《MirrorPlant 01》を展示予定。チェックして。
anan 2510号(2026年9月2日発売)より









































