
杉本博司《ポコット族》2025年 ゼラチン・シルバー・プリント 119.4×185.4cm Ⓒ Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi
6月16日から東京国立近代美術館で写真家・杉本博司の展示がスタート。現代では希少な“銀塩写真”の作品、約60点が並ぶほか、初公開となる新作、未公開資料なども公開される。
銀塩写真で覗く、写真の奥深さ
写真、建築、舞台芸術の演出などジャンルを超えて活動を続ける現代美術作家・杉本博司。彼の芸術の原点は銀塩写真だ。銀塩写真とは、光に反応する性質を持つハロゲン化銀をフィルムや印画紙に用いて画像を形成する写真のこと。写真がデジタル化した現代では、銀塩写真はもはや“絶滅危惧種”ともいえる存在だ。
「大学を出て、ニューヨークに着いた25歳の時点で一番得意とする写真でアーティストになることに決めました。写真家として認知してもらえた後は、まだ余裕があり、その後は成り行きでいろいろなジャンルに興味が移っていきました。例えば建築写真を集中的に撮影した時は、建築の本質がわかり、その段階で自分も建築をつくる側の世界に入っていく。皇居前の松を撮影した作品をオーストリアの美術館で展示することになった時、松があるなら能舞台を造ろう。能舞台を造ったら能をやりましょうと、次から次へ因縁が因縁を呼ぶ形で全部がつながっていったんです」と杉本氏。78歳となった今も仕事は連綿と続いているという。
本展は1970年代後半に制作された杉本の初期作品から現在の作品に至るまで、約60点の銀塩写真を紹介。“時間を写す”“真実を問う”など革新的なコンセプトで、写真の奥深さを伝える作品が並ぶ。注目は初公開となる新作だ。杉本の初期三部作として知られる〈ジオラマ〉シリーズからは《ポコット族》が初登場。また〈海景〉シリーズや、〈スタイアライズド・スカルプチャー〉〈Opticks〉シリーズにおいても新作が公開される。さらに同館3階所蔵作品展内では杉本作品のサテライト展示があり、彼が撮影時や暗室での作業工程の覚書を’70年代半ばより記録してきた未公開資料「スギモトノート」も展示される。
終わりゆくものを見つめることで、今を生きる世界の輪郭が鮮明になる。そんな視点を与えてくれる本展。観れば、杉本氏が今の時代に訴えたいものが見えてくるはずだ。
information
杉本博司 絶滅写真
東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー 東京都千代田区北の丸公園3-1 6月16日(火)~9月13日(日)10時~17時(金・土曜~20時。入館は閉館の30分前まで) 月曜(7/20は開館)、7/21休 一般2,300円ほか TEL. 050-5541-8600(ハローダイヤル)
anan 2499号(2026年6月10日発売)より


































