東映・白倉伸一郎プロデューサーが語る、仮面ライダー55周年、進化の方程式

老若男女に愛され、その歴史が今年55周年を迎えた「仮面ライダー」シリーズ。現在放送中の『仮面ライダーゼッツ』の映画の公開も夏に控え、ワクワクを生み続ける様は特撮の王様と言っても過言ではない。その進化のロジックをプロデューサー視点から深掘りします。


1971

仮面ライダー

1971年~1973年放送の『仮面ライダー』は、悪の組織ショッカーに改造された青年・本郷猛(藤岡弘、)が、人類の自由と平和のため、仮面ライダーに変身して戦う物語。巨大化などはせず等身大のままバイクに乗って戦うリアル志向や、改造人間という悲哀を背負った設定が新しく、来のヒーロー像を大きく刷新。以降の特撮作品に多大な影響を与えた。Ⓒ石森プロ・東映

2025

仮面ライダーゼッツ

『仮面ライダーゼッツ』は、夢の世界で戦う物語。主人公・万津莫(今井竜太郎)は、胸に巻く変身ベルト“ゼッツドライバー”で仮面ライダーゼッツに変身。悪夢を現実にしようとする謎の怪人・ナイトメアから人類を救うため、夢と現実の二つの世界を跨ぎ、戦っていく。身体の2本ラインや、黒いボディに配されたグリーンのパーツなどが仮面ライダー1号に似ていると話題に。 映画「ゼッツ・ギャバン インフィニティ」製作委員会 Ⓒ石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

大胆な変化もいとわない挑戦の繰り返し

1971年にスタートし、今年周年を迎えた「仮面ライダー」。子ども心をくすぐる変身やアクションはもちろん、胸を打つ人間ドラマも丁寧に描かれ、世代を超えて愛され続けるシリーズだ。長年同シリーズに携わってきた白倉伸一郎さんは、子どもも大人も夢中にさせる作品づくりについてこう語る。

「主人公を魅力的にする、ということは毎回大事にしています。登場人物が素敵な人間として描かれていれば、子どもには『こういう人間になりたい』と思ってもらえる。また、演じる俳優自身の魅力がにじみ出るのも実写の良さで。大人の視聴者にとっては、高校球児を見るのと同じような感覚で成長を見守っていただけるという面もあるんですよね」

そんな魅力ある主人公を作り上げるため、出演者の選定にも時間を費やす本シリーズ。オーディションでは様々なドラマがあるようだ。

「例えば、『仮面ライダージオウ』(’18〜’19年)の渡邊圭祐さんは、すごく面白い方でぜひ出てもらいたいと思って。でも、ちょうど合う役がなかったので、本筋には絡まないナビゲーターのような役を彼のために新たに作りました。それによって物語の構成は当初から大きく変わりましたが、最終的にはあたかも最初から予定されていたかのような形にハマっていったんです」

こんなエピソードからも、変化をいとわない柔軟さが感じられるだろう。歴史は長くとも、固定観念にとらわれず “今年はどんなライダーを見せてくれるのか”というワクワク感を常に与え続ける──。ファンからすればそれこそがシリーズを追いかける醍醐味だといえるが、制作側としては並々ならぬ苦労もあるようだ。仮面ライダーのパブリックイメージを大きく覆した、平成ライダー以降の大転換もまたしかり。

「(平成ライダーの)色を確立できたと確信した瞬間は何回もありました。でも、手応えを掴んだ次の一歩ほど、なぜかうまくいかないんです。小手先でやっているつもりはまったくないんですが、何かバレちゃうんでしょうね(笑)。毎年、どうしても生みの苦しみは生じます。でも、このシリーズは常に変革を目指しているので、 “勝手知ったる引き出しだけでやる”という感覚はないんですよね。裏返すとうまくいっているものをかなぐり捨てるということでもあるので、プロとしてはどうなのかというところはありますけど(笑)」

この9月からは55周年作品である『仮面ライダーマイス』がスタート。まだ謎につつまれている今作でも、やはり新たなアプローチが盛り込まれているという。

「作品世界そのものが、どこか変で可愛い。壮大な時間と空間を扱った物語ですが、すごく見やすいと思います。また、『マイス』は歴代シリーズとはまた違ったヒロイン像が描かれているので、そこにも注目してください」

さらに、来年には人気作『仮面ライダー電王』(’07〜’08年)の20周年プロジェクトとして完全新作映画が制作されることが発表済み。ファンの期待も大きく高まっている。

「何をやるか具体的なことはこれから詰めていくんですけど(笑)。でも、やること自体を前もって発表するぐらいには壮大なプロジェクトにしていきたいなと。『電王』好きな皆さんが想像しているようなこと、そして想像もつかないようなこと、両方できたらいいなと考えています」

終わらない挑戦の先に、ヒーローは生まれ続ける。「仮面ライダー」はこれからも、新たな物語とともに時代を切り拓いていく。

白倉さんが語る特撮の王道とは? こちらの記事もチェック!

お話を伺った方

Profile

白倉伸一郎

1990年東映入社。'92年『恐竜戦隊ジュウレンジャー』、2007年『仮面ライダー電王』など数多くの特撮作品でプロデューサーを務める。近年の作品に映画『シン・仮面ライダー『』アギト-超能力戦争-』など。

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取材、文・野村文

anan 2500号(2026年6月17日発売)より
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No.2500掲載

王道エンタメの矜持

2026年06月17日発売

55年間ときめきを追いかけ続けてきたananがこのメモリアルな号で特集するのは“王道エンタメ”。市川團十郎さん、反町隆史さん、辻村深月さんなど、それぞれの世界で王道を歩んで来られた方々のインタビューを通して、各ジャンルにとっての王道とは何かを探ります。

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