
公開以来、興行収入はすでに66億円を突破。現時点で今年の実写映画No.1の大ヒットを記録している映画『Michael/マイケル』。プロデュースを手掛けているグレアム・キング氏に製作の裏側をたずねた。
世界中で現在大ヒット中のこの映画。音楽伝記映画としての歴代No.1の記録を更新しており、全世界累計興行収入10億ドル(日本円で約1600億円!!)突破が目前。そして日本では、6月12日の公開以来、興行収入はすでに50億円を突破。動員、興行収入ともに、現時点で今年の実写映画No.1の大ヒットを記録中。そんな映画のプロデュースを手掛けているのが、グレアム・キング氏。手掛けた作品が数多くアカデミー賞にノミネートされているという、ヒットメーカーだ。
── まずはこのヒットに関して感想をいただいてもいいですか?
世界中でこの映画を、娯楽作品として楽しんでもらえていることがとても嬉しいです。私はSNSやTikTokもよく見ているんですが、喜びに満ちた素晴らしいコメントが溢れていて、性別に関係なく若い世代にも刺さっているようで、それも嬉しいですね。僕はもちろん、マイケルもきっと喜んでくれていると思います。
── いつ、マイケル・ジャクソンの映画を作ろうとひらめかれたのですか?
『ボヘミアン・ラプソディ』が一段落し、さあ次は何をしようと考えていたときに、キング・オブ・ポップのストーリーを描く…というアイデアが頭に浮かびました。マイケル・ジャクソンは言わずもがなの大スターで、素晴らしいエンターテイナーですが、同時に彼も一人の人間。しかし、タブロイド紙がおもしろおかしく書き立てる記事ばかりという時期もありましたし、生前は人間としてのマイケル・ジャクソンは、あまり描かれていませんでした。僕は1981年から、マイケルと彼の家族、特にジャファーの父であるジャーメインと親しくしていたこともあり、人間としてのマイケルを、僕が描かないで誰がやるんだ、と思ったんですよね。誰かに取られてしまうって(笑)。もちろんそれは、とてつもないチャレンジだということもわかっていました。ハリウッドの人たちはみな、「マイケルを演じられる役者なんて、絶対いないよ」と言っていましたし。正直その時点では、僕も、そんな役者を見つけられる自信はなかったわけですから(笑)。
── でも、素晴らしい二人の役者と巡り会うことができました。
おっしゃるとおりです。一度も演技をしたことがなかった二人が世界中で受け入れられ、大喝采を浴びている。その姿を見るのは毎回感動します。ジャパン・プレミアでもその光景を見ることができ、嬉しかったです。
── 実在の人を演じるというのは非常に難しい仕事だと思います。何が必要とされるのでしょうか?
僕らが求めていたのは、真似をするのではなく、マイケルに“なる”こと。モノマネをする人なども含め190人以上もオーディションをしましたが、なかなかいい人は見つからなかった。そんな中でジャファーに会うわけですが、演技はしたことがないし、この先もする気がない、とまで言っていた彼に、僕は会って10分で、特別なもの、つまり「この人だ」という感覚を抱いたんです。その後は、粘土の中に埋もれたミケランジェロの彫刻を掘り出すように、大切に大切に役を作り上げました。彼に伝えたのは、マイケルになってほしいと同時に、ジャファーの個性も大事にしてほしいということ。『ボヘミアン・ラプソディ』でフレディ・マーキュリーを演じたラミ・マレックのときも同じことを思いましたが、見た目の顔、体型、髪型が一緒じゃなくてもいい、魂の部分が表現されていれば、観客は受け入れてくれるんです。
── これまでも評価の高い伝記映画を作られていますが、その仕事に惹かれる理由はなんですか?
先ほど話したフレディ、今回のマイケル、それから私はヴィクトリア女王やハワード・ヒューズ、モハメド・アリの映画も作りましたが、彼らがどんな人間だったかを、映画を通してみなさんに観てもらいたい、というのが一番の理由です。特にミュージシャンの場合、若いみなさんは音楽は知っていても、アーティストのことを知らない場合が多い。なのでストーリーの中に音楽を流れるように入れていく、そこに作り手としてのやりがいがありますし、うまくいくと喜びを覚えますね。
── 今作は、マイケルの抱える孤独や寂しさがテーマのひとつだと思いました。そのあたりでなにか意識したことはありますか?
YouTubeでは見られない姿を描きたい、と思いました。彼が22歳、23歳の頃かな、会うといつもハッピーで、ニコニコしている印象なのに、観察すると、深い寂しさや孤独を抱えている雰囲気がありました。彼のそういった部分を描くために、映画の中では楽しいシーンにこそもっと深い意味合いがあるように意識しました。例えば、もうスターになったあと、マイケルがツイスターゲームを持ってきて「やろうよ」と兄たちを誘うんですが、「僕らは家族とかがいるし、忙しいんだよ」と断られるシーン。そのあとマイケルは、チンパンジーのバブルスとゲームをするわけですが、一見とてもユーモラスな場面なんですけれど、実は寂しさや悲しさに溢れているんですよね。
── バブルスをはじめ、ラマのルイやヘビのマッスルズなど、友だちが動物ばかりというのは、正直とても切ない気がしました。
ラマを連れてきたときに、本当だったら母親が「これはおかしい」と言うべきだったと思うんです。でも母親もマイケルの寂しさがわかるから、否定するどころか助長してしまう。結果、動物はペットではなく友だちになってしまったんでしょう。だからバブルスとのシーンのとき、私はジャファーに、「友だちだと思ってね、ペットではないんだよ」と、何度も言いました。
── ちなみにバブルスとのシーンはどのように撮影したのですか?
猿などの動物を使う撮影はアメリカでは法律違反になる可能性もあるので、実はあれは、着ぐるみを着た小さな少年が演じています。最終的にビジュアルエフェクトをかけて、チンパンジーに見えるようにしているんです。そういえばバブルスにも会いに行きましたよ。彼は今フロリダにいて、のびのびと幸せそうに暮らしていました。食べ物を詰めたリュックを背負っていて、朝、昼、夜とそこから好きなものを出して食べているそうです。クレバーですよね(笑)。
── 噂によると続編がある、とのことですが、なにか教えていただけることがあれば!
え、私は聞いてないですが…ってそれは冗談ですが(笑)、確かに彼にはもっとドラマティックなストーリーがありますから、それを実現化できるよう、魔法の方程式を探しているところです。全てを手に入れた人間がそのあとどう生きていくのか、真実味のあるストーリーを描けたら、と思っています。ただ、作るには少し時間がかかりますので、ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです(笑)。
Profile
Graham King
グレアム・キング 1961年12月19日生まれ、イギリス出身。メジャーからインディペンデントまで、多数の映画を製作。近年ではアカデミー賞を多数受賞した『ボヘミアン・ラプソディ』を製作したことで知られている。
Information

映画 『Michael/マイケル』
マイケル・ジャクソンの半生を描いた伝記映画。出演/ジャファー・ジャクソン、ジュリアーノ・クルー・ヴァルディほか 監督/アントワーン・フークア 脚本/ジョン・ローガン 製作/グレアム・キングほか配給/キノフィルムズ 全国公開中。
写真・森山将人(TRIVAL) 取材、文・河野友紀
anan 2505号(2026年7月22日発売)より

































