意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「変わる観光政策」です。


世界的に問題なオーバーツーリズム。相互理解の努力を。

2024年に日本を訪れた外国人観光客は約3700万人。日本経済に貢献する一方で、多くの観光客が押し寄せ地域の負担も増大。’25年から富士山登山の入山料が4000円となったり、地域によって特別料金を導入するなどの対策が取られ始めています。

オーバーツーリズムの問題は世界各地で起きています。ポルトガルではビザの期限を過ぎて滞在した場合には250ユーロ加算、リスボンは観光税を倍に。スペインのバルセロナではビーチで喫煙した場合は30ユーロの罰金。観光税を増額する地域も。イタリアでは都市間の移動を管理する規制を導入、ギリシャでは一部の島でクルーズ船で訪れる乗客に税を課すことにしました。

世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)の試算では、世界の海外旅行支出額は、2025年は過去最高の約307兆円、2035年には37%増の約423兆円になると予測されています。

問題になっているのは、主にマナーです。住宅地にズカズカ入ってきたり、喫煙不可な場所での喫煙や、ゴミを放置したり、音楽を鳴らす、大声で騒ぐなど。各国はそれを罰則や税の徴収で規制しようとしていますが、日本は声かけによって注意を促したり、地域の方が我慢するなど、罰則強化や観光税導入などの対応が遅れているんですね。

日本も2019年からは国際観光旅客税として、出国時に1回につき1000円徴収、京都は2018年に宿泊税を導入し、1泊につき最低200円を徴収するようになりました。しかし、これらももう少し金額を引き上げてよいのではないかといわれています。

ただ、マナーに関してはいきなり罰則を課すのではなく、日本の常識を伝える努力も必要だと思います。公共政策調査機構は、「秩序あるインバウンド観光推進委員会」を立ち上げ、海外出身のインフルエンサーに観光エリアを訪れてもらい、魅力を伝えつつ、日本の常識やマナーをSNSを通じて伝える活動を始めました。日本にはまだ知られていない魅力的な場所がたくさんあります。そういう場所を伝えることで観光客を分散させ、マナーを知っていただくことで、地元の人々との相互理解につながるとよいなと思います。

堀 潤

Profile

ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。

写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

anan2454号(2025年7月9日発売)より

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社会的責任を担うという、個人としては少し重いテーマの日です。生活をする以上はお金が必要ですし、社会的義務や仕事上の責務もあるものですが、そうした事柄から逃げずに日々の務めを果たす胆力や底力が試されています。負担が増すことに対する理解と耐性、または社会人としての自覚を強めるための試練とも解釈できます。

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