
ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。お笑い芸人・紅しょうがの熊元プロレスさんを迎えての対談をお届けします。
初めて買ったあゆのCDはユーロビートver.だった!
ゆっきゅん:熊元プロレスさんとは、『上田と女が吠える夜』の「浜崎あゆみと共に生きてきた女」回で共演して以来。私は収録時、ド緊張でした。
熊元プロレス:私と浜崎さんとは「Just the way you are」のMVに出演したご縁がありましたけど、なによりスタジオのみなさんが私のことをどう思っているかが不安でした。あゆのMVに芸人が出てるのは嫌なんじゃないかな、とか一人でいろいろ考えてしまって。だから私もあの場にいることに緊張してたんです。
ゆっきゅん:いや、みんな仲間でしょ!
熊元プロレス:優しかったです。
ゆっきゅん:私もですが、熊元さんもあゆ直撃世代より下の年齢ですよね?
熊元プロレス:そうなんです。
ゆっきゅん:でもあゆって世代とかじゃないですからね。
熊元プロレス:そうです。私も高校時代にリアルタイムで聴けていたらもっと人間変わってたなと思いますね。きっとギャルやってた。
ゆっきゅん:10代の切なさを新譜で聴く体験は絶対違いますよね。
熊元プロレス:そう思います。私はまぁずっと好きやけど、めっちゃ好きになったのは芸人になるくらいから。それこそ今は漫才の出囃子で「Boys&Girls(A Eurosenti Mix)」を使わせてもらってます。
ゆっきゅん:『SUPER EUROBEAT presents ayu-ro mix』のバージョンですよね。いい時代すぎる。
熊元プロレス:たまたま相方の稲田も同じの持ってたんですよ。私は小学生の時に最初のあゆのアルバムとして買っていたので、「Trauma」も速いバージョンの方が馴染みがあって(笑)。あゆは昔の曲でも、本当に今紡いでいるかのように歌うじゃないですか。音楽を聴いて泣くという感覚を初めて教えてくれたのがあゆなんです。
ゆっきゅん:ですよね。そしてあゆ自身も毎回泣いていますからね。
熊元プロレス:あゆが泣いて、私たちも泣くっていう。自分の歌で毎回ちゃんと感動して泣けるって本当にすごいことだと思います。涙で歌えなくなるあゆをファンのみんなで支える感じも素敵ですよね。
ゆっきゅん:そうそう! あとこれ熊元さん相手だから喋りたいんですけど……。私は今、歌手をやっているけど、子どもの頃から女性芸人が好きで、なりたかったんです。
熊元プロレス:え? 全然違いますよね?
ゆっきゅん:具合的に言うと、黒沢かずこさんになりたかった。
熊元プロレス:たしかにDIVA感ある!
ゆっきゅん:そうなんです。黒沢さんの「テキトーハニー」大好き!
熊元プロレス:絶対、進む道は歌手で正解だったと思いますよ(笑)。
『NANA』の魅力はすべてあゆの曲で解説できる!?
ゆっきゅん:熊元さんは漫画の『NANA』好きですよね? 私も5年ほど前に一気読みしてハマりました。たぶんそれはあゆの歌詞が叩き込まれてるおかげ。当時って歌姫が輝いていた時代だから、『NANA』にはいろんな歌姫像が投影されていると思うんですけど、読んでいると、“え、これもあゆだしあれもあゆが歌ってたこと?”みたいに私は勝手に解釈しちゃったりして。
熊元プロレス:それめっちゃわかります。
ゆっきゅん:『NANA』の魅力をあゆで説明するイベントをしたこともあるんです。例えば主人公の大崎ナナは「Memorial address」そのものだし、トラネス(※1)は「Dearest」を絶対歌ってるとか、レイラ(※2)は「No way to say」が似合うとか。私はすでにあゆを心と体に取り入れていたから『NANA』をすらすら読めたし、あの作品にキュッとなる感受性を育んだのはそもそもあゆだったという。
熊元プロレス:わかる! 漫画の回想語りの部分とかも、あゆのメロディに絶対合わせられますよね。
ゆっきゅん:「ねえ ナナ あたし達の出会いを覚えてる?」の時点でもう過去の切ない語りじゃないですか。それってもうあゆだから!
熊元プロレス:私は小学生の時から読み始めていたので深く考えたことはなかったけど、たしかにすぎる!
ゆっきゅん:年末、漫画アプリで無料配信されて、新たな世代が『NANA』を知ったことで、レイラがめっちゃ叩かれているらしいですね。
熊元プロレス:ストーリー的にレイラは嫌な女に見られがちなんでしょうね。
ゆっきゅん:でも私、「歌に選ばれた人」のこと好きなんですよ。だからレイラは私が守りたい!
熊元プロレス:ゆっきゅんさんが守らなくても、タクミが守るから(笑)。
ゆっきゅん:それはそう(笑)。
熊元プロレス:でもナナにとってのヤスみたいな、気づくとそばにいてくれる存在って憧れますね。
ゆっきゅん:確かにヤスいたらいいな。
熊元プロレス:スベった時とかに「お前が一番面白いからな」って言われたい(笑)。あ、でもショーレースの決勝行った時とかは、ヤスになってくれる人多くて。後から思うとキザやなと思うようなことでも、結構芸人みんな言葉にしてくれるんです。「絶対行ける!」って言ってくれたり、負けた時も笑いにしたり茶化したりしない。
ゆっきゅん:めっちゃいい関係性ですね!
熊元プロレス:勝負前にはストレートに声援をくれる熱い人が多いんです。そういう時は台詞みたいな感じで相手の言葉が入ってきて、漫画の登場人物になった気分です。
※1 ナナのバンド、ブラストのライバルバンド。
※2 トラネスのボーカル。
アウェイの現場での、それぞれの乗り切り方
ゆっきゅん:芸人さんっていろんな場所でネタをされるじゃないですか。私もアウェイな場所でライブする機会があって。それが温泉なんですけど。
熊元プロレス:宴会場じゃなくて? お湯が張ってあるところですか?
ゆっきゅん:はい、石川県の大型旅館で開催される音楽イベントでした。もちろん観客も服を着ていて、会場が温泉なだけなんですけど、結局私は衣装のまま温泉に浸かって歌いました。モノボケじゃないけど、この会場を使ってどうパフォーマンスできる? っていうのを試された感じがして。
熊元プロレス:それすごい沸きそう!
ゆっきゅん:フェスだから会場にいるのは私のファンだけではないし、知らない人も多い環境だから余計に力が入りましたね。
熊元プロレス:ブラスト(『NANA』に登場するバンド)の初ライブみたい。
ゆっきゅん:そこまでじゃないです(笑)。熊元さんはそういうサバイブ経験あります?
熊元プロレス:いや、温泉ほどの強い話はないですよ! 逆に今の芸人はありがたいことに恵まれた環境下でやらせてもらうことの方が多いです。昔はいろいろ聞きましたけど。ゆっきゅんさんはアウェイで燃えるタイプ?
ゆっきゅん:そうですね。出番の後半には初見の観客たちを納得させるみたいなのが快感です。
熊元プロレス:すごい! スーパーとかで歌ったことってあります?
ゆっきゅん:コンビニはやりました!
熊元プロレス:え? どういうこと?
ゆっきゅん:ちょっとしたライブができるコンビニがあるんです。コンビニでワンマンライブって誰もやってないなと思ってお願いして。結構店内設備を使いこなしましたね。レジに横たわってみたり、パンコーナーにグッズを並べてみたり。
熊元プロレス:すご! 私の場合、アウェイってほどでもないですが、コロナ禍に体調不良のミルクボーイさんの代役で愛知県の篠島に営業に行ったんです。前日の夜決まって。当日、ポスターを見たら「M‐1チャンピオン・ミルクボーイが篠島にやって来た!」って書いてあって。当時まだTHE W優勝前で知名度もなかったから、プレッシャーがハンパなかったですね。子どもたちも多かったからモノマネしようかなと思ったら、みんな口々に私を見て「ちびまる子ちゃん」やら「お相撲さん」やら、自由に振ってくるんです。体大きいだけでお相撲さんって、昨今テレビでもしないシンプルないじりすぎて、ただ四股踏みました(笑)。
ゆっきゅん:子ども、恐るべしすぎる!
名は体を表す? リップのネーミングに注目!
ゆっきゅん:熊元さんの赤リップいいですよね!
熊元プロレス:いつもつけているのはNARSのマットタイプ。発色で選んだんですけど、後からお店の人に「スターウーマン」っていう色名なんですと教えてもらって。最初から名前で選んでつけていることにしています。
ゆっきゅん:「スターウーマン」ってネーミングが良すぎますね!
熊元プロレス:すごい奇跡やなと思います。
ゆっきゅん:実は私もそれに近いことがあって、今日のリップはM・A・Cの「ディーバ」という色なんです。それまでもダーク寄りな赤リップを使っていたんですけど、ファンの方から似たような色をもらって。それがまさかの「ディーバ」! やはり、私ってセンスがDIVAなんだと実感。
熊元プロレス:プライベートではあまり真っ赤はつけないんですけど、テンション上がりますよね。
ゆっきゅん:なんかパッとしてないなっていう日でも、リップ塗ったら納得して気合が入るんですよね。
熊元プロレス:実は私、もともとシャイなんですよ。でも、小3の時に無理やり殻を破ったっていう。
ゆっきゅん:それ、早いですね!
熊元プロレス:小1の時に成長痛であまり学校に行けず、その後はかなりの人見知りやったんですけど、このままではだめだと思って。終わりの会で手を挙げて、「慎吾ママのおはロックを踊らせてほしいんですけど」って言ったんです。みんな帰りたいし、盛り上がるとかじゃないんですけど、その時はスイッチが入ってやりきりました。そこで恥ずかしさの許容ラインが人より上がりましたね。
ゆっきゅん:もうDIVAとしかいえない。熊元さんのDIVA性が開いた瞬間、まさにあんたがDIVAです! 読者はシャイな方が多いと思うので、これを参考に……。
熊元プロレス:これ絶対に真似できないでしょ(笑)。でも私はこの時、男子とつながりたいという目的が1個あったからこそできました。モテるためにはまずは目立たないといけないんで。
ゆっきゅん:熊元さんって落ち込んだ時どうしてますか?
熊元プロレス:解決を早めるために、まず寝て考えを整理しますね。でも昔は落ち込む自分に浸ってたことも。ドラマみたいに服のまま風呂に入って泣くみたいなことを実践したら、アホらしくなって客観的に笑えてきました。
ゆっきゅん:ちょっと最高すぎます!
熊元プロレス:あ、でも結局私たちができるアドバイスってこれかも。「女子~! 落ち込んで気分上げたい時は、赤リップつけや~!」
Profile

熊元プロレス
くまもと・ぷろれす 1990年、兵庫県生まれ。2014年、相方の稲田美紀と共にお笑いコンビ・紅しょうがを結成。『女芸人No.1決定戦 THE W 2023』では王者に輝いた。ラジオ関西のPodcast『紅しょうがは好きズキ!』は毎週月曜23時頃配信。
Profile

ゆっきゅん
1995年、岡山県生まれ。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。セカンドフルアルバム『生まれ変わらないあなたを』のリミックスEP『生まれ変わらない私を!?』が配信中。
anan 2440号(2025年3月26日発売)・2441号(2025年4月2日発売)・2442号(2025年4月9日発売)・2443号(2025年4月16日発売)より