えすとえむ『うどんの女』4
本作の1巻が完結作として刊行されたのは、2011年のこと。それから10年以上の時を経て続編が始まった、珍しいパターンである。
うどんは人間関係のメタファー
「自分としては恋愛ものをまた描くつもりはあまりなかったのですが、『いいね!光源氏くん』を描けたのもあって、今だったら当時よりも軽い感じでできるかもしれないと思いました。幸いにも、好きと言ってくださる方が多かった作品で、周りの声に後押しされる形で続編を描くことになった感じですね」
美大の学食で働く35歳バツイチの村田チカと、学生・木野の恋愛模様を描いたのが1巻。続編は、その5年後の物語となっている。
「木野くんは主人公らしいビジュアルだったのに対して、続編で登場するジョージくんはイケメンではないけど、子犬のような愛嬌のあるタイプにしたかったのです。そういったキャラクターをメインに置く場合、容姿にコンプレックスがあって、それを軸に描くケースが多いと思うのですが、彼は自己肯定感が高いからそうはならない。どこにでもいそうな男子が叶わなそうな恋を打破していくときってどんな感じなんだろう、とストーリーを考えていました」
チカの働く学食でバイトしているジョージは、客の顔からうどんかそばか注文がわかる、“麺相”を見る達人。しかし講師として母校に戻ってきた“ヅカさん”というクールな女性が、彼の連勝をストップさせる。

Ⓒえすとえむ/祥伝社 FEEL COMICS
「ジョージくんの言う麺相は、ある種の先入観なわけですよね。最初のイメージからどうやってその人の内面と接していくのか、がサブテーマでもあって。ヅカさんみたいに一見かっこいい女性の印象が変わっていく過程を描きたいと思いました」
近寄りがたい人という先入観を周りに抱かれ、実際に近寄ってこないことに気楽さも感じていた、ヅカさん。しかし空気が読めないジョージは、恋なのか憧れなのか自分でもわからないまま、ヅカさんに突進。さらにチカの離婚の一因がヅカさんにあることが判明して、関係性がうどんのように絡まっていく…。って、そもそもなぜ、うどんだったのか?
「パッとゆでるだけの、学食のうどんのような他愛のなさがいいなと思いました。恋愛だけど、気負いのないものとして描きたかったのです。うどんは作画的な面白さもあって、こんがらかっているように見えるけれど、箸で1本引き上げてみるとそうでもなかったりして、人間関係のメタファーにもなる。角がなくて柔らかいところもよくて、作品のなかで便利に使っていました(笑)」
飾らない、ゆるゆるとした恋模様、のびる前に手は打てるのか!?
information
『うどんの女』4
子犬系男子ジョージと、ハンサムな女性ヅカさん。マイペースなバツイチ40歳のチカと、15歳下で草食男子の木野。2組のカップルの予測不能な恋を描く最終巻。祥伝社 880円
Profile
えすとえむ
マンガ家。2006年『ショーが跳ねたら逢いましょう』でデビュ ー。カズオ・イシグロの小説『日の名残り』のコミカライズを「ハヤコミ」で連載中。
anan 2486号(2026年3月4日発売)より













