
吉澤嘉代子さんのアルバム『幽霊家族』は記憶と家族がテーマ。幼い頃の情景や家族との思い出が描かれたパーソナルな内容ながら、聴く人に普遍的な懐かしさや愛を感じさせてくれる一枚に仕上がった。
かつての少年少女だった全ての人に捧げる曲
「どんなに境遇が違っても、人は誰しも家族、あるいは家族のような存在から生まれ育ちます。それは人間にとって避けては通れない普遍的なテーマ。それを今、アルバムとして形にしようと決心したきっかけは、私の地元である埼玉県から植樹祭のテーマソングの依頼をいただいたことでした。その制作で私は故郷と向き合い、荒川の土手を思い出しながら個人的な原風景を『メモリー』という曲にしました。かつての私は自分を保つために、音楽を作ることで故郷から逃げようとしていた部分もあったんです。でも、ずっとその道を歩き続けていたら、こうして故郷に繋がっていた。それがわかったとき、嬉しい気持ちになり“ノスタルジーをテーマにしたアルバムを作るのは今だ”と、ようやく腹を括ることができたんです」
今作には吉澤さんのご家族が登場する楽曲が多く収録されており、スケール感溢れるバンドサウンドでアレンジされた「おとうと」では自身の弟になりきってエモーショナルに歌われている。
「この曲は私が大学生で、弟が高校生だった頃の気持ちを歌っています。本人に聴かせたら『僕じゃない』と言われて、ちょっと書き直したりもしましたけど(笑)。〈僕の血肉になるんだ〉と励ますような言葉は弟の歌だからこそ書けたんだと思います。かつての少年少女だった全ての人に捧げる曲として録音しました」
他にも、ノスタルジックな曲調が突如サンバ調になる「ピーマン」や、イラストレーターのてらおかなつみさんと歌詞を書いた「わたしの犬」など、楽しい聴きどころ満載。家族と撮影したアルバムのジャケットと『幽霊家族』というタイトルについてはこう語る。
「記憶って“もう会えないけど、確かにそこにあった”という幽霊のようなイメージだなと思い、タイトルを『幽霊家族』にしました。ジャケットには私の家族である父、母、弟、祖母、そして愛犬に登場してもらっています。『(生きているのに)幽霊家族と言われるのはちょっと…』と戸惑われながら(笑)、撮影は和やかで温かい時間でした。自分の人生を整理するようなアルバム制作でしたが、こうしてリリースさせていただけて、今はただ感謝の気持ちでいっぱいです」
Profile
吉澤嘉代子
よしざわ・かよこ 1990年生まれ、埼玉県川口市育ち。2014年にメジャーデビューし、ドラマティックな楽曲世界と変幻自在な歌声で聴く者を魅了し続ける。5月には東阪NHKホールでの単独公演を開催。
information

6th Album『幽霊家族』
5年ぶりのフルアルバム。「たそかれ」「うさぎのひかり」などのシングル曲を含む全12曲。【通常盤(CD)】 ¥3,520 【完全生産限定盤(CD+BD)】 ¥13,200(ビクターエンタテインメント)
anan 2488号(2026年3月18日発売)より














