
4月18日(土)からスタートする舞台『ナルキッソスの怒り』。本作にたった一人で挑む、俳優の成河さんにインタビュー。本作へのこだわり、そして“俳優”という仕事への想いを聞いた。
僕たちがやろうとしているのは、いかに現実と演劇の世界の繋ぎ目をシームレスにするか
舞台『ナルキッソスの怒り』は、リアルと虚構が交錯するオートフィクションの手法で描かれたひとり舞台。登場するのは成河さんのみ。本作の作者で劇作家セルヒオ・ブランコに、彼自身が体験した物語を演じてほしいと依頼される。
「オリジナルは、本当にセルヒオの親友という人が演じたもので、その彼のリアルな話題も戯曲に盛り込まれているくらい、作品自体が現実を巻き込んでいるんです。それを僕が演じることになった場合、どこまで僕のリアルな部分を巻き込んでいくのか…。僕自身が僕の言葉でしゃべらなくては意味がないので、お引き受けするなら脚本にも関わらせていただかなくてはとの思いで、覚悟も必要でした。
ただ、演劇…とくに日本語の場合、お芝居のセリフは整理されていますけれど、実際のしゃべり言葉はそこまで整理されていません。いかにしゃべり言葉に近く聞きやすい形にするか試行錯誤でした」
翻訳家と演出家を交えての作業は、約1年をかけておこなわれたそう。
「上演台本を作る時、“演劇を知っているならわかりますよね”にならないよう心がけました」との言葉通り、まるで観客は、成河さんの体験した変わった出来事をみんなで聞くような、そんな芝居になった。ただ、そこで終わらないのが本作のミソ。いつしか話はトンデモない方向へと展開していく。
「僕たちがやろうとしているのは、いかに現実と演劇の世界の繋ぎ目をシームレスにするかということです。劇場にいたはずが、知らない間にありえない世界…たとえば銀河だったり、不思議の国のアリスの世界だったりに連れていかれて、カーテンコールで現実に戻される。それをするのが僕は本当の意味での俳優の“特別な仕事”だと思っています」
それにしても、だ。成河さんという俳優ときたら、その“仕事”に自分自身で高い課題を設けて、そこに挑んでいるように見える。
「僕は俳優の技術や芸ってなんだろうということに興味があるんです。まだ答えに辿り着けてはなくて、いろんな作品に取り組みながらずっと答え合わせをしている感覚です」
今や“演劇モンスター”との異名を持つ成河さんが、ひとり舞台に立ち、自らの技術と芸で魅せる作品だ。面白くならないわけがない。
「目の前の日常から思いもよらない場所に連れていき、ちゃんと家に帰します(笑)。そういうことが人間ひとりの体でできるんだって知ったらびっくりするんじゃないかな」
Profile
成河
そんは 1981年3月26日生まれ、東京都出身。舞台を中心に活躍。今年6~7月に『ハムレット』、9~10月には『ニコラ・テスラ ~エジソンが恐れた孤高の天才~』、11月には『巨匠とマルガリータ』が控える。
information

『ナルキッソスの怒り』
スロベニアの首都・リュブリャナを訪れた劇作家のセルヒオ。滞在するホテルの部屋には、なぜか赤い染みが点々と残っていた。そんな中、現地の美しい青年と知り合い情事に溺れるが…。
4月18日(土)~30日(木) 池袋・東京芸術劇場 シアターウエスト 作/セルヒオ・ブランコ 演出/藤田俊太郎 翻訳/仮屋浩子(『ナルキッソスの怒り』北隆館刊) 上演台本/仮屋浩子、成河、藤田俊太郎 出演/成河 全席指定8800円ほか チケットスペース TEL. 03-3234-9999(10:00~15:00 ※休業日を除く) 公式サイト
anan 2492号(2026年4月15日発売)より
















