人気も評価も高騰中! ダウ90000を率いる蓮見翔の戦略に迫る

蓮見翔さん

演劇もお笑いも流行ってないと、シーンをずばり斬る。その冷静沈着な分析眼こそ蓮見翔は流行っている理由か。その冷静沈着な分析眼こそ「蓮見翔は流行っている」理由か。演劇&お笑いの二刀流ユニット、ダウ90000を率いる新世代カリスマの戦略を4つのキーワードから読み解く。

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    Profile

    蓮見翔

    はすみ・しょう 1997年4月8日生まれ、東京都出身。2020年、日本大学藝術学部の後輩らと、ダウ90000を旗揚げ。演劇、コント、漫才などすべての脚本と演出を担当する。千原ジュニアや佐久間宣行ら、芸人や演出家からの信頼も厚い。ちなみに今熱狂しているのはリメイク作がNintendo Switchでリリースされた『ポケットモンスター ファイアレッド』。

    ダウ90000

    だうきゅうまん 演劇とコントの垣根を越え、双方のファンから支持される8人組。コントの単独ライブは即日完売。昨年の演劇公演『ロマンス』に続き、今年は単独ライブで全国ツアーを開催予定。コントは公式YouTubeチャンネル「ダウ九萬」(@ダウ九萬)で見られる。メンバーそれぞれが蓮見と組み、お笑い賞レースにも挑む。左から、園田祥太、忽那文香、蓮見翔、吉原怜那、中島百依子、上原佑太、道上珠妃、飯原僚也

    写真・樋口涼

    TVのバラエティ番組を録画して繰り返し見ていたお笑い好きの少年は、令和で最も“熱狂”を集める演劇/コント作家になった。それも異例のスピードで。

    「ダウ(ダウ90000)を結成したのは2020年。大学時代のサークルの仲間に『本気でやる人だけ残ってくれ』とお願いをして。そう言ったからには自分も腹を決めないと。ちゃんと考えるようになったのはその時からかも…」

    初めは小劇場の定期公演とYouTubeから。蒔いた種は瞬く間に花を咲かせ、結成年で全国ツアーができるほど客層は広がった。今年、岸田國士戯曲賞も受賞。

    「今まではラッキー。それをどう続けられるかが勝負。そのために日々戦略を練っています」

    蓮見翔の戦略1|ダウの頭脳、司令塔

    ダウ90000主宰としてチームをまとめる蓮見さん。すべての脚本・演出を手がけるが、メンバーに相談することは「ない」と、きっぱり断言する。

    「そこは逆にメンバーを尊敬している部分です。だって僕は他人に全ベットすることはできないから。自我を出すことなく、すべて委ねてもらっていることに作り手として感謝しかないです。だから、メンバーが食っていけるよう僕が舵を取り続けないと。チームがいい方向に進めば自分も良くなっていく。それはこれからも変わらないと思うので。ダウは自分にとって最適な創作環境。それを続けていく努力は惜しまないつもりです」

    蓮見さんが賞レースにこだわるのも、TVに出演して先輩芸人への尖った発言で場を沸かすのも、すべてダウ90000をもっと大きくするための戦略だと話す。

    「全国で公演を打って集客するためには、どうしても知名度が必要です。今は僕が広告塔的な役割も担っている。役割を分担したほうがいいんじゃないと思われるかもしれませんが対の構図でいいんです。コントの中でも“なんか変なことに巻き込まれる蓮見”さえ押さえてもらったら、見方がわかりやすくなる。一人だけ顔が売れていることは、大人数でコントをやる上でも有利だと感じています。どう多くの人に僕たちを理解してもらい、舞台まで足を運んでもらうか。そのための思考回数は、誰にも負けないと思っています」

    蓮見翔の戦略2|演劇か?コントか?

    現在、演劇公演とコントを主体とした単独ライブを開催しているダウ90000。

    「演劇かコントか。その線引きは自分の中でも曖昧です。演劇公演の場合、時間程度の長尺で、コントは今のところ分くらいが最長。じゃ、分の脚本を書いたとして、それは何なのか。演劇かコントかというのは投げかけでしかない。答えはないんですよね。誰も答えを知らないからこそ、知りたくて興味をそそられる。劇場に来る動機づけにさえなっていればよくて、結果どっちだと判断されても観に来た人が面白かったと思ってくれたら、まぁそれでいいんじゃないかなと思っています」

    今年、『ロマンス』で若手劇作家の登竜門である岸田國士戯曲賞を受賞。その影響はどう考える?

    「過去に回候補にあげていただいていたので、これは自分が最も獲れそうな“賞レース”の一つだと(笑)。受賞した『ロマンス』は、自分の中でテーマを作り、“これは演劇だ”と意識して狙って書いた一本。自身の内側にある創作への想いを曝け出すことに気恥ずかしさがありましたが、それが評価されたことは素直にうれしくて、報告を受けた時には泣きました。脚本家としてお墨付きをいただけたのかなと安堵しましたし、お笑いのシーンでもイジってもらえるネタが増えたなと(笑)。僕のバラエティでのキャラ的に説得力が増せば増すほど、何をやっても面白くなるかなと思うので」

    ダウ90000の本領を知る、演劇とコント

    第7回演劇公演『ロマンス』

    演劇公演は2021年『フローリングならでは』から2025年『ロマンス』まで7回。第2回『旅館じゃないんだからさ』、第5回『また点滅に戻るだけ』が岸田國士戯曲賞の最終候補に。第7回『ロマンス』で3度目の最終候補にノミネートされ、受賞に輝いた。

    ダウ90000単独ライブ「40000」

    2022年「10000」から開催されているコントのみの単独ライブ。最新公演「40000」が7/3の大阪を皮切りにスタート。大阪・近鉄アート館、東京・銀座博品館劇場など、全国10都市で開催。5/8まで大阪・東京公演の一次抽選受付中。写真は「30000」より。

    蓮見翔の戦略3|漫才とお笑い賞レース

    漫才の頂上決戦『M-1グランプリ』には、2021年からエントリーし、昨年は蓮見さんと他の7人がそれぞれコンビを組み、7組で挑戦。結果、園田祥太さんとコンビを組んだ「1000」など3組が準々決勝まで駒を進めた。

    「なんで『M-1』にこだわるかというと、お笑いの中では漫才がいちばん流行っているから。そこに乗らない手はないと思うんです。でも僕たちは漫才師ではないので、年かけてきっちりネタを磨いてきた方々には到底敵わない。だったら話題だけでもと組エントリーという裏技を編み出しました」

    賞レースは他にも『ダブルインパクト』や『キングオブコント』などにも積極的に参加。『ABCお笑いグランプリ』は2022年から年連続決勝まで残っている。

    「お笑いが好きなので、勝てる場面があるならそこは勝ちにいきたいとも当然、思っています。芸人に憧れて今の自分があるので、賞レースという形で認めてもらえたらこんなにうれしいことはないです。最近は、芸人さんと絡む機会も増えてより一層すごいなと思うようになりました。だってみなさん、ずっとウケようとしてるんですよ。中高生の頃からウケるにはどうすればいいか頭を悩ませてきた人間なので、同じように考えている人がこんなにいるんだということにあらためて感動で。みんな、人を笑わせるために一生懸命考えている。こんなに愛おしいことはないなとずっと思っています」

    ダウ90000の漫才コンビ(一部)

    1000(園田・蓮見)/メンバーの中で唯一の同期コンビ。『M-1グランプリ2025』準々決勝進出。お笑いライブ「超能力少年」を主催する。

    4000(吉原・蓮見)/最年少の吉原はもともとお笑い志望。『ダブルインパクト2025』で準決勝進出。ユニットライブ「青春38きっぷ」に出演。

    5000(道上・蓮見)/現在予選開催中の『ダブルインパクト2026』にダウ90000から唯一エントリーし、予選1回戦を突破。2回戦は5/3~。

    1/1

    蓮見翔の戦略4|演者か?作家か?

    ダウ90000の作・演出のみならず、ドラマの脚本やエッセイ執筆、他の芸人のコント台本を書き下ろすことも。各方面で「面白い」と認められるほど、演者と作家、二刀流のバランスをどう保つかが難しくなっていきそうだ。

    「どちらかしかできないんだったら、職業としてはやはり作家なのかなと思います。作家だけをやっていても現場で芸人さんには会えるしね(笑)。ドラマや映画など舞台とはまた出力の仕方が違う作品に挑戦したいです。それをやることで、演劇やコントの強みも再確認できそうですし、自分ができることの幅も広がりそうです」

    可能性を広げながらも、お笑いが好きで、生の舞台が好き。そのことは蓮見さんの中で大事な“核”であり続ける。

    「やっぱり生のライブにいちばんの熱狂を感じますから。演者として、舞台の上でダイレクトに笑い声を浴びることも好きですし、客席とステージの上がバチッとハマる瞬間は、なんともいえない快感がある。ダウもよく呼んでいただく『グレイモヤ』というお笑いライブがあるんですが、熱量が半端ないんですよ。演者も選りすぐりで、そこに集まるお客さんも熱狂的。お笑いにも、そういう熱のある場所があることを多くの人に知ってほしい! 密室的な空間で起こる、今日のこのネタはここでしか観られないものだった…みたいな現場を目撃する興奮は、他のものには代え難いなと思います」

    盟友・園田祥太さんに聞く「“現場”の蓮見さんって、どんな人?」

    ずっと変わらずに、同じ学校の面白いヤツで居続けてくれる

    現場の蓮見翔は、みなさんが想像する“カリスマ”とか“奇才”とは違う印象だと思います。ずっと男子のままなんです。小学生とか中学生の頃のままというか。近所の駄菓子屋で見つけた10円くらいのカードを買ってきて「なつかしくね?」とメンバーに見せたり、コンビニでチキンを買ってそれ齧りながら延々とゲームボーイで古いゲームをしていたり。そういう時の蓮見が、いちばん目が輝いていると思いますし、チームの一員としてはホッとさせられます。ジュニアさんに「こいつ、面白いんだよ」と認められる蓮見はTVの向こうの、雲の上の世界の人のようですが、お笑い大好きの芸人オタクな部分はずっと変わらない。小学生の頃の好きな気持ちのままで突っ走っているから、誰も歩いてない道をひるまずに行けるんだろうなと思います。

    現場の演出家としてどうなのかは、僕たちはダウの現場しか知らないのでよくわからないんですが、とても穏やかなほうだと思います。たまに、僕へのダメ出しで「きれいな植物があったら、お前のせいで枯れてるぞ」などとイジられ、胸に刺さることもありますが(笑)、それも含めて平和だなと思います。

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    写真・内田紘倫(TheVOICE) スタイリスト・中島有哉 ヘア&メイク・久木山千尋 取材、文・梅原加奈

    anan 2494号(2026年5月1日発売)より
    Check!

    No.2494掲載

    熱狂の現場 2026

    2026年05月01日発売

    いま人々の心を熱くするエンタメの現場に迫る「熱狂の現場 2026」特集。熱狂を生み出す現場からの熱い思いを伺いました。

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